久しぶりに図書館の「アエラ」のバックナンバーを探していたら、「仕事に全人格を捧げ、私が壊れていく」(2016年2月15日)という大特集を組んでいて借りてきた。その中で、「中高年派遣34万人の悲鳴」というテーマを再読した。


中高年とは45歳~64歳までと定義して、様々な体験者を取材している。派遣人口の3割が中高年層だ。1986年7月、労働者派遣法が施行されてこれまで翻訳や速記士・通訳など特殊技能以外は派遣を認めていなかった。それが現在、派遣会社約7万5千社、売上は5兆円にのぼり、マージン率はおよそ30%。東日本大震災や福島原発除染では50%を超えるマージンを取って、さらに下請け・孫請けへと現場労働を移転している。


法律で守られているからよけいにタチが悪い。元手のかからない商売であるから、思う存分立地のいいオフィースを構えられる。実態はしかし、広域暴力団山口組の発祥が神戸港での荷揚げ業務の委託であったが、構造的には何も変わらない。知り合いで大学を出て派遣会社に勤め、数年で自分のしている仕事に疑問を感じて転職した(自分の仕事に誇りを持てない)人がいた。派遣の現実を報道するテレビ会社も外注で、人件費を削減する工夫をしているから同じ穴のむじなである。表は関連会社といえ、実態は正社員の既得権益を守るための防波堤的な役目を果たしていて、長時間と過重労働・低賃金に泣いている。


筆者の勤めていた企業で3社の派遣社員(全員女性で30代)を雇用していたが、正社員の女性との親しい会話はゼロに近かった。ボーナス支給日は、明細書は派遣社員が帰宅した後に総務から配られた。派遣社員が入ってから、社内はどんより感が蔓延。飲み会や社員の総会には出さず、強いストレスで辞めて行った女性も多い。昔はたくさんあった雑談が極端に減ってしまった。


派遣社員に何か言うことがあれば、派遣先の会社を通じて話すという陰険さが、また彼女たちを不安がらせていた。派遣は企業の利益を短期で上げるが、社員同士の関係性を悪化させて、果たして、企業マインドにとって良策かどうか図ると、長い目で見たら社会の荒廃、家庭の崩壊、個人の他人不信、富者と貧者の差別増進、パニック障害やうつ病を増やすだけ。中高年の派遣は一度、派遣のサイクルに入ると出れないケースが多い。面接に行っても、当該企業の採用担当者が派遣社員なら自分の気持ちをわかってくれるだろうけど、まずそういうことはありえない。他人への、社会への不信感だけが増幅する時代が続く。


中高年になるとそれなりの人生経験を積んでいるから、竹中平蔵時代に施行された派遣法は日本社会をがらりと変えてしまった。

  1. 中規模以上の会社には、大抵派遣社員が居る。女性が多く、新聞社や放送局の受付嬢もビルメンテナンス会社系の派遣だったり、ほかでは経理事務でも派遣社員女子は活躍している。しかも正社員より大変真面目に働いていて企業を支えてくれている。いっそほとんど全員派遣ならまだしも、企業側の経費の都合でそうはいかない。少数だと正社員との間に壁ができるのは必至。労働時間はきちんと守る派遣社員は時間内に片づけなければならない仕事で、生ぬるい正社員と談笑などしている暇も無いのだろう。まるでロボットのように無表情でせっせと労働する姿は痛々しい限りだ。そのうち派遣会社はロボットを派遣する時代になるのではないだろうか。時代の推移とともに失業者はさらに増えて行きそうだ。

  2. 失業するから派遣登録する訳で、現代社会に派遣業が蔓延るの訳は、失業者が多いと言う事を証明している。昔は「手配師」などが居て、大阪駅あたりに朝早く着いて始発電車を待っていると「兄ちゃん、いい仕事紹介するでぇ」と手配師が忍び寄って来る。大抵は「タコ部屋」行きだ。今や堂々とスーツを着て大手派遣会社のバッジを胸に、若き「手配師」たちが会社訪問して人(労働)を売っている。姿こそ変われど本質は駅に居た「手配師」と何ら変わらない。

  3. スキルアップ。

    企業側にも大いに責任はある。企業は人を育てなくなった。即、戦力、実力を求めるあまり、新卒を気長に教育していくよりも派遣のほうがキャリアも証明書付きだから手っ取り早く契約する。このままでは正社員など不要になってしまうが、契約社員に責任まで持たせるわけにはいかない。これからは、企業も育てる気が無ければリクルートも考えなければならないし、入社前にスキルアップをして就活に臨むしかないだろう。

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