昨年、モスクワで1年暮らした娘の同級生が地元紙に「主婦目線で見るモスクワの暮らし」と題して2回にわけて素晴らしい記事を書いていた。幼児を抱えてモククワの病院で2人目の女児を言葉が通じない中、出産した話とか、驚いたのは物価の安さ。


特に主食のジャガイモは1キロ・日本円で30円。チーズも安く、市内で始まった「はちみつの市」へ出掛けてみたら、その種類の多さ・安さにびっくりしたこと。さらに市民がエスカレーターにベビーカーを乗せるときに、「お先にどうぞ」と誰も彼も親切にしてくれたことを感謝の気持ちで書いていた。


肌で感じる主婦目線。現代で一番忘れられてることがはっきり書かれてあって読んでいる私もモスクワに暮らしているような錯覚になった。テレビ局や新聞社の特派員は男が多くて、政治や経済は大事であろうけれど、毎日の普通の暮らしにどれだけ視線が向いているのか心もとない。本社の方を向いて記事を発信している輩が大半である。


ロシアは現在人口が1億4千万人、日本の人口とさほど変わらない。チェルノブイリ原発事故の被害で原発本体を棺化する作業が続いているが、東側には天然ガスと大森林があって人口稠密だ。モスクワ市民は土・日になればダーチャ(野菜をつくるための別荘)を持っているから郊外へ出掛ける。落ち着いた暮らしは安い食糧費用、安い家賃、低い失業率なら給与が多少安くても楽しい家庭生活が営める。共産党の特権官僚たちは不正蓄財をしていたり、彼らの子供たちは夜遊びと麻薬に溺れているかもしれないが、ほとんどの市民はその時間は寝ている。世界中、全部そうだと思う。


プーチンという独裁者をメディアは何度も何度も書きたてているけれど、国として、国内のチェチェンやイスラム教徒がISに加わる人も多いけれど、総じて世界で一番、国内が安定しているように見える。


「ロシアは立ち直り始めている国なのであって、出生率の上昇や乳幼児死亡率の低下にもそれが現れている。失業率も低い水準にある。もちろんロシア人たちは貧しいし、西ヨーロッパに暮らす者が、社会の自由度のことも含め、ロシアのシステムを羨望することはありえない。けれども今日、ロシア人であることは、強くて安心させてくれるナショナルな集団に属する感情を与えてくれる・・・」(エマニュエル・トッド、ドイツ帝国が世界を破滅させる  22p)。


天然ガスのパイプラインはロシアからドイツまで大きなパイプが2本引かれている。ここからEU各国へ供給するのだ。ロシアは、スポーツ薬物使用でオリンピックに出ようが出まいが、国民が安い食べ物、雨がしのげる屋根、郊外に別荘があること、モラルの面でアメリカの上を行くかもしれない。あとは超安いカラシニコフ銃の製造と輸出を止めて、世界への平和に貢献することであるかもしれない。ドーピングでオリンピックに出なければ無駄な税金を使わなくて済むから、選手の身の安全が確保できたと思えば安いもの。静かな日々が過ごせる。メダルなんか要らない。


何でも世界一にならないと気が済まないアメリカとそんなことどうでもいいいよ、大したことではないよと考える人が左右にいたら、あなたはどちらを選択するだろうか?ジャガイモ1キロ30円でニコニコ笑いながら暮らす方が楽しく生きていくのが幸せの道ではないだろうか?

  1. ジャガイモ大好物。

    ロシアに旅した人がホテルで牛乳を飲みたくなり、ぶらりと外出して牛乳を探すと、なんと大きな透明ビニール袋にいっぱいの牛乳が売っていたと驚いていた。僕たちの感覚では小さな紙パックか牛乳瓶だが、ロシアはスケールが違う。ここにも物価の安さがうかがえる。最近、北海道の美味いジャガイモを探しにスーパーに出かけると、地物はなく、千葉や茨城や鹿児島産ばかりだ。国内で流通するうちに段々高くなる野菜も、いっそロシアからバルク船で釧路港に運んできたほうが安いのではないだろうか。生活物資の輸入などを糸口に北方領土交渉なども良い方向に向かって欲しいものだ。

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