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北斎

kunisada

国貞

Kuniyoshi

国芳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東海道四谷怪談」

昔は夏といえば怪談の季節で、映画やテレビの怪談物は、多くの子供達の純真な

心にトラウマを残しました。中でも「四谷怪談」は怪談の中の怪談、キングオブ

怪談ですが、最近はさっぱり見かけません。君子は怪力乱神を語らずと言って、

怪談話はあまり上等な方々のなさるところではないと言われていますが、私を含

め、下々の間ではこういうものこそ日本の伝統そのもの。消えてしまうのは寂し

い限りです。

 


四谷怪談は、元禄年間に江戸の四谷町(現在の雑司が谷)で起こった実話を元に

した、歌舞伎や講談話。なかでも、最も有名なのが鶴屋南北の「東海道四谷怪

談」です。これは当時絶大な人気を誇った「仮名手本忠臣蔵」(かなでほんちゅ

うしんぐら)の外伝の形をとっていて、お岩さんの実家が赤穂藩の家臣という設

定です。昔の歌舞伎では忠臣蔵と交互に何幕かずつ上演されたそうです。

 


話は御家人崩れの伊右衛門が、その伝手で得た職場で上司の娘を妊娠させ、邪魔

になった妻のお岩さんに毒を盛って殺します。そして、お岩さんは見るからに恐

ろしい怨霊となって伊右衛門をとり殺してしまう、というものです。不倫の挙句

に毒を盛って謀殺。相貌は醜く崩れはて、発狂して死ぬのですから、現代のテレ

ビでは、はばかりが多すぎてとても放映できないのかもしれません。私はこうい

うトラウマを共有しないで、世代間のコミュニケーションもないとは思うのですが。

 


四谷怪談は、日本人が何百年にもわたって怖さを磨き上げてきた、いわば怪談話

の「国宝」です。映画やテレビで見なくなったのは残念ですが、せめて葛飾北

斎、歌川国芳、歌川国貞等の巨匠の手になる四谷怪談の浮世絵をご覧ください。

私自身は昔用事があって、お岩さんのお墓のある巣鴨の妙行寺で、きちんとお参

りしてきたので、こういうものを目にしても祟りということはありませんが、そ

うでない皆様は寝苦しい夏の夜に、日本人ならではの血も凍るひとときを味わっ

ていただきたいと思います。


 

  1. 昔は人魂が飛ぶのを見たとか、よく聞いたものですが最近は余り聞きません。デジタル化が進んで、今やバーチャル映像でのトリックも出来てしまいますから、幽霊の出番も無くなってしまったのでしょう。子供たちもゲームソフトやアニメの中で登場するお化けたちには、怖がらないでしょう。自分でコントロールでき、しかも絶対安全な場所に自分が居るから。近代化で、お化け屋敷以外に、身近に実体験できるような怖い場も無くなったのでしょう。

  2. (投稿者注)
    伊右衛門は御家人崩れではなく、ただの婿養子でした。天保六歌撰の直侍と混同してたようです。妖怪もキャラクターになる時代ですから、そのうちかわいらしいお岩さんが登場するかもしれません。

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