自転車一周旅行もいいけれど・・・。
台風の影響で雨続きの天気。毛布やシーツを持ってコインランドリーに行くと自転車に荷物を積んだ若者。学生かなと思って声をかけると「日本一周をしている」という。年齢は35歳であった。自転車に約35キロの荷物を運びながら野宿をしつつ、すでに稚内を通り、美瑛・富良野も走行してこれから小樽・函館へ行き、フェリーで青森に渡り、日本海を下って北陸・山陰方面に向かうとのこと。体調が悪ければ東京へ引き返すと。
もともと都内に自宅があって、専門学校を出て働き、貯めたお金でツーリングをしているのだと。大学生が仲間と声かけあってするツーリンググループは見かけたが、35歳で毎年こういう旅を一人でしているとはカルチャーショックであった。勤めていれば中堅でばりばり働ける年齢なのに。自転車を漕ぐ体力があれば何でも働ける。
タブレット2台、携帯1台を携行していた。お節介な私は何かあればと思い自分の携帯番号を教えた。この日は雨が終日、降り続けて道の駅から動けず(ショートメール)で、今市立図書館で休んでいるが相棒がもう一人いるとのこと。早速、車で図書館へ行くと、相棒はぐっすり寝ていて、彼だけを連れ出して近所のパン屋へ。ソフトクリームとパンをごちそうして、相棒の分のパンも持たせて図書館へ戻ると、巨体の前歯がない青年が立っていた。39歳だと後で聞いた。
彼も自転車で旅をしているが、行く先々で仕事を見つけて(主に農家)稼いで、ねぐらを確保し、生活費(旅費)をもらって生きているらしく、次にどこへ行くかは自分でもわからないらしい。修理した三味線を風呂敷に包んでいる。ミュージッシャンなのだろうか?道内のジャガイモ農家に生まれたらしいがなぜこういう旅がらすになったか、詳細は聞けなかったが、面白いのはお互いそれぞれ名前を知らないで会話している風景だ。実際、39歳の男は彼の名前は知らないが・・と枕言葉を言っていた。
道の駅は、ご存知のように全国からキャンピングカーが停泊している。こちらは60代70代。ゴミの捨て方が汚いと評判が悪い。旅をする割にはお金を地元に落とさず、ゴミを残して走り去る。お互い、毎年、顔を合わせているのか、情報交換やお喋りに夢中である。月に15万~20万のお金がかかるキャンピングカーだけど、自転車の場合、35歳の青年に聞くと一日2000円を限度に生きているというから6万から7万くらいだ。一番困るのが荷物を雨に濡らすことだと。
北海道は誰も住んでいない長い道が続くので恐怖感も出てくると言っていたが、怠け者の私から見ると「なぜ、そんなに走ることが楽しいのか」わからない。山登りやマラソンについても同様の感想だ。ふと私は彼らが「旅するホームレス」に見えてくる。パン屋でバイトする可愛い女学生と親しげに話しだす35歳を見て、筆者は「もう自宅に帰って新しい人生をはじめてもいいのでは」と心の中で思っていた。誰かと話したい心境に旅は誘う。恋も始まるかもしれないし。漂泊の自転車量である。うまく現実社会に適応できなくて、引きこもるより可視的ではあるが、別な人種が現れたと筆者は思うのである。引きこもらず漂う人生を選択する人々。
旅の果ての北海道。
寅さんの現代版ですね。でも現実にはシナリオは無いだけに、考えようによっては楽しくもあり、哀しくもあるのでしょう。彼らを風体だけで哀れに思うのは、案外間違いかも知れませんよ。実は、実家が富豪で働かなくても良く、人生の暇つぶしを楽しんでいるなんて事も考えられますからね。第一、本当の貧乏人は、旅行できるくらいに丈夫で高価な自転車すら買えませんからね。つまり自分に当てはめればよく判りますが、孫たちには4台もの自転車をなけなしの金で買ってあげても、長年欲しいと思い続けている自転車も買えず働きづめですからね。僕たちの現実は働かなくては生きていけないと言う事ですから。それに、若気の至りで旅した北海道に今も居座る自分に、今、気づきました。他の地に行くにも、もう体力もさる事ながら、お荷物が多くなりすぎて、身動きできない状態ですけどね。そう考えれば自分も実は寅さんだったわけです。自転車の彼らも、荷物が増えればいつかは落ち着くでしょう。
親切なおじちゃん。
自転車旅行の自転車には、バイクのようなナンバー・プレートが有りませんから、一見してどこから来たのか、話さない限り判りませんね。それにしても若者?たちは旅先で、いいおじちゃんに会えた訳ですね。旅先で親切にされればいい想い出になりますね。親切なおじちゃんの事は、彼らの夢のアルバムの中にいつも登場する事でしょう。都会では親切なおじちゃんには十分気を付けなければいけませんが。
old bad boy
若い人からすれば、同じ年代で結婚できない・しない人も多いし、派遣やアルバイトも多いようですから、ブラック企業や住居に閉じ込められて、ムダな費用をかけ続けるよりマシかもしれません。長年そういう生活をしてるのなら体力はあるし機転もきく。季節ごとに各地に発生する高額アルバイトの口を見つけておいてローテーションできれば、税金は申告だけして無税、国保も年金も払った上で、同世代サラリーマンより貯金が多いかもしれません。問題は彼らがあまり金を使ってくれないことですが、人脈も広いし、足で稼ぐ生情報も多いのですから、ネット上の起業もできるかもしれません。まだ自転車族独自の文化が生まれてはないようですが、彼ら同士で移動する家族やコミュニティを作れば、ホーボーやジプシーのように、独自の文化が生まれ、ちょっとした経済の牽引力になるかもしれません。「かも」ばかりではあるものの、若いというのはいいなあと思いますね。