ストレートな題名にひかれて読んでみた。『あなたの若さを殺す敵』(丸山健二 朝日新聞出版 1500円 2010年4月刊)。


咋日、『テルマエ・ロマエ』の原作者 ヤマザキ マリさんの頑張れ雄たち!という『マスラオ礼賛』を書いた後で、平行読書をしていて、トーンはもちろん丸山健二さんが厳しい。


たとえば『人生は最初から最後まで試練と闘いの連続で成り立っています。どんなに恵まれた環境に身を置いている者であっても、それを避けて通ることは不可能です。そう運命づけられているのです。それはまた、人間も野生動物の仲間にほかならないことのあかしです。野生動物であるならば、おのれの能力のありったけを注ぎ込んで生き抜かなければなりません。その道を歩むことでしか命の輝きは成立しないし、真の若々しさに包まれることもないでしょう』(これは、昨日書いた『デルス・ウザーラ』の〈デルス〉の生き方に酷似していないだろうか?(未読の方は前日のブログを読んでいただきたい)。


これが主調音で流れて、全編(190p)を貫いている。農民が餓死する国は終わりのように、ときどき自分の食べるものは自分で作る土地や技術を身に着けなさいともあちこちで語っている。『どうせ紙切れに過ぎない金銭や債権や証券や契約書を凄まじい勢いで回転させることによって保持してきた豊かさもここへきて完全に煮詰まり、頭打ちになり、疲弊し、どうやっても先へ進む道が見つからず,苛立っています。』。


貨幣の本質は『運動』にあるから、じっとしていられないので、それで家や車や旅行や教育を含めて投資をしたり、男の場合は愛人を囲ったり、破天荒な賭博に使ったり、多くは他者から見た『見栄』(どうだ、うらやましいだろう)にお金を消費します。私の知人にデパート外商部を自宅に来てもらい、500万の時計を2個買って、湿度計の器に入れて眺めている人がいました。


この運動を手助けする人たちが、旅行代理店やファンドに従事したり、証券業務や不動産売買をさせたり、オレオレ詐欺グループやイベント大好き広告代理店であることは申すまでもありません。『若さを殺す』話から逸脱していますが、若さの本質は自立性、自発性です。他人任せにはしないという生き方です。


昨日、書いたヤマザキ マリさんが14歳でイタリアへ一人で旅立ったりした話を書きました。彼女は最終章で『私の母はなぜ油絵で生きていこうと決めた私に激しく意見してこなかったのだろう。なんでまたあんなににも簡単に、自分の娘を見ず知らずの外国に送り出したのだろう。親元からも故郷からも遠く離れて生きていくことが、こんなにも大変だと仄めかすこともなく』(218p 前著)丸山健二さんに言わせると、母親が彼女を成熟させたともいえる。


若さの本質を殺すのはほとんど『母親の過剰な愛』だという結論、フロイト学者の岸田秀さんが、自分の悩みを自己分析していくと結局『母親が自分を母親のエゴのもとに育ててきた』ことに気づきました。フロイト学を用いて精神の格闘をしました。丸山健二さんのこの本も母親がいつのまにか息子を依存させる、息子を自分のエゴを満足させる人間に誘導している実態、それを見過ごし、知らない顔をする父親という家庭の中に切り込んでいきます。農業への誘いの本でもありました。貧しくても自分の食べるものくらい作ること。


巷間にぎわす、第二の人生や第三の人生と言うけれど、『人生は一つしかない』。人生には定年はないのである。法律や企業規則やマスコミで洗脳されているだけ。洗濯や掃除、台所仕事を見ればよくわかる。世の中に定年のない職業を列挙すれば、主婦、農民、漁民、弁護士、医師、公認会計士、創業社長、自営業、ヤクザ、政治家(当選すればの話)、捕まらない殺人者。そして、実は生きているすべての人類にも定年がない。野生動物と同じように。

  1. 昨日、新聞社の1階で広告局の若手社員とお茶をして別れ際に、知り合いのプロダクションの社長から声をかけられ、ギャラリーの椅子を借りて話しました。彼は開口一番、「いつまで働くの・大丈夫?」と切り出しました。僕は迷わず「死ぬまで!」と答えてやりました。「忙しいの?」との問いに、「超忙しいよ!」と、「羨ましいな」と。顧客の社長にもよく言われます。「いつまで働くの?」と。そして、僕が頑張っている間は社長を辞められないとも。こんな時、自分は結構役に立っているのではないかとさえ思えてきます。確かに年齢は皆同じように取るわけですが、気持ちの持ち方で、元気にも、そして長生きもできるような気もします。よく働くと言うことはつまり動き回るわけでいい運動にもなるわけですし、作業したり、会話をすることも脳を使うわけです。年齢以上の無理な運動はきらいですが、ほどほどに動いているのが精神にも肉体にもいいようですね。僕自身は歩かないでクルマに頼ってばかりいますけどね。反省!

  2. 子供の頃、田舎で育った経験から、少しは農作物の作り方など知っているはずだが、自分で作ろうとしない。せいぜい庭でミニトマトやトマトくらいか。田植えも稲刈りも、大根抜きから、炭焼きから何でも手伝ったので、やる気になればできるはずだ。が、そのやる気が起きないのは、毎日多忙もあるが、町の暮らしに染まりすぎたせいだろう。先日亡くなられたカストロ氏は食糧危機打開策に各家庭で食料を作る政策を打ち出してみごと自給率を高めた実績がある。共産主義の統制のとれた国、キューバだけに、急場には強い。TPPよりキューバをしのぐ方式だろう。

  3. 可愛い娘には旅。

    ヤマザキマリさんの母親は元ヴィオラ奏者で父親は指揮者で札響に所属していたようですね。早く父親に先立たれ、寂しいはずの母親が彼女にドイツ行きをすすめたようですね。(ドイツに知人がいたらしい)まだ幼い多感な少女を一人で外国に行かせる母親の潔さには驚きますね。そこで会ったイタリア人に芸術を目指すならイタリアだと諭され即イタリアにと。彼女も母親に似て潔いですね。陶芸を習ったり多彩に才能を磨いて来たから、自らの経験で知識が豊富なのでしょう。この母親の真似は、なかなかできないでしょうね。

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