ドバイの砂・アフリカの力。
先日、中心部で店を経営するご主人へ、カレンダーをいただいたお礼に『訳あり煎餅』を持参したら、『お返しにドバイの砂を上げる』といわれた。小さなビニール袋に数グラム取り分けてくれた。『沖縄の星の砂とは全然違いますね』と私。砂や石や鉱物を好きな筆者なので嬉しかった。『ドバイでは観光客が砂を持ち出すことは厳禁』。
砂といえば精密なカメラでも砂嵐が来ると、カメラに砂が混じり使えなくなるという思い込みがあるが、『ドバイの砂は、鉄分が含まれていて比重が重い。砂の上を車が走れるのだ』という。『えっ、そんな砂漠ってあるの?』『地盤が固いのでタワー建設に最適で、地震もないところで(地球上にそんな場所があるのか)今も世界一のタワーを作っている。たしか清水建設がやるはずだし、海水を真水にする施設も日本の企業がしている』と。ドバイを見に行く札幌の企業経営者のツアに欠員が生じて、彼が参加したのである。
ワールドカップのドバイ開催もあるし(怪しげな金の手渡し疑惑アリ)、建築ラッシュだ。『しかし、ニューズウィークではネパールやインド人の建設労働者が過酷な労働で棺に入って帰国するケースも多いんだよ』と私。とはいえ、『アフリカの中流階層の買い物が凄いんだ。びっくりするよ。半端じゃない』とカルチャーショックを受けてきた。アフリカの爆買。中国を先頭にアフリカへの投資、主に地下資源とカカオやコーヒーなどの食糧、原油やレアメタル、貴金属が眠る大地だ。あらためてアフリカ大陸とヨーロッパの大きさを比べると、未来はアフリカに軍配が上がる。
アフリカはヨッロッパによって人工的な線を引かれて、国を名乗ったが、もともと部族がメーンで欧米的な国家観を後付で押し付けた影響はいまも続いている。部族同士の殺戮や餓死も今も続く。悲劇にまだ終焉の兆しはない。一方、ドバイに爆買に来る層も厚くなっていることは知っておきたいことである。人類の夜明け、昨今、『世界のベストセラー』サピエンス全史(上・下)も始まりはアフリカから、そしてヨーロッパとアジアとユーラシアへ旅が始まり、すでに存在した人類を滅ぼし(同化して)ホモ・サピエンスを形成した。
これからの時代、地球は2回目のアフリカの時代が到来する予感が筆者にはする。人口数と面積、地下資源の豊富さ、生物の多様性、そして芸術。国の数の多さと身体能力。ドバイを旅するアフリカの人たちの話を聴いて、筆者の想像の羽根は明るい未来のアフリカへ飛ぶ。アルジェリア(旧フランス植民地)出身の哲学者フランツ・ファノンがヨーロッパの知識に引き裂かれる自分の自我に苦しんだ。アルジェ出身の作家カミュもそうだ。支配された側の人間が今度は支配する側の論理と知識で、故郷に帰ってくるときの苦しみみたいなものである。しかし、ある世代からそういう悶々がなくなれば、凄いパワーが溢れる気がするのである。『ドバイの砂』の話から話題は飛んでいって申し訳ない。