お先にどうぞ・・の生き方。
内田樹さんの本に、究極の倫理的な生き方は、「お先にどうぞ」を実践することだと映画「タイタニック」でディカプリオ君が恋人に浮き輪を上げて、沈んでいくシーンを書いていた。他人を生かすために自分の死を厭わない生き方である。年齢から言うと、若い人がより長い人生を過ごすわけだから「あれをしたい」「こんな新しい仕事をつくりたい」「こんな思いつきがあるんだけど」など次々にアイディアが浮かぶ人がいるものである。失敗しても何度でも復活させる仕組みを作って安心してチャレンジできる世の中にしたいものである。10代でも20代でも30代の男女で世の中に積極的に打って出る人を応援して、せめて、彼らの邪魔をしない中高年になりたいものである。
筆者は新しい仕事や企画を考える会議を何年にもわたって主催してきた。その実感でいうと最低ひとり10案はいろいろなアイディアを持っている。その中で一つ二つはシンプルながら実現する場合がある。会議はご存じのようにマイナスの意見に流されるケースが多い。そういう「失敗するかもしれない」「言うが損、責任を取らされる」という無言の空気が会議室に流れて、大脳を委縮させがちである。しかし、そのとき40代や50代の「やってみては。それ面白いよ」と背中を押してくれる上司がいると気持ちが楽になる。ここに小さいながら資金提供(予算)がつけばしめたもの。前のめりに生きてきた私だから言うが、初めての仕事はしんどいものである。手探りでいくしかない。何度も私は失敗・挫折したが、「ほら、だから言っただろう。ダメだって、それ」と口出しする先輩もいたが、後ろ押しをしてくれた上司は「勉強代だと思えば安いものだ」「次に頑張って」と言ってくれる。
この話をなぜ書くかと言うと、どうも世の中、異なる意見や、ちょっと変わった視点、いわゆる変わり者へ、今までにないものの考え方を抑圧する空気が流れているようで気になるのだ。戦前の大本営発表に日の丸の旗を振って提灯行列をしていた国民が馴らされた時代と変わらないねと思うのである。そういう空気を破る生き方、考え方が「お先にどうぞ」と若者を激励する中高年の役割のような気がするのだ。激励しなくても邪魔しないで、風通しを良くする裏方仕事を手伝う程度で見守りたい。そういうところから世の中をいい方向へ変えていくシステムや起業の種が生まれると思うのである。これからの世界に未来からの信号を受け取ってるかもしれない人々に「お先にどうぞ行ってください」。「何か助けすることがあれば遠慮なく言ってください」。未来のある人に道を開けましょう。
昔の少年。
大きな組織の中にいて、後輩たちの仕事をサポートするやり方はどこでもやっておられると思います。私はそれほど大きな組織の経験はなく、こじんまりした環境ばかりでしたので、サポートどころか自ら率先して動く癖が付いています。組織の長であれ、代表であれ若い一般社員と一緒の動きをしてきました。もちろん自分にもノルマを掛けてきました。大きな企業になれば、一番奥の大きなデスクにいつも部長がいて小さなデスクに一般社員さんが部長席から背中を見られて座っている図式が一般的でした。でも小規模組織はそうは行きません。もちろん若手社員のサポートで同行などはしましたが、すべて彼らにお任せとまでは出来ませんでしたね。
広告マン。
そう言えば、昔まだ若い頃、会議でアイディアを求められ、斬新なビッグ・アイディアを提案しました。なんと、支店長から一言「それはムリだわ」と。ガッカリした記憶は、今も忘れられません。そのアイディアは余りにもスケールが大きすぎて確かに大変な内容でした。それでもせめて多少規模を小さくしても取り上げて欲しかったものです。その後は上司に相談無しに、自分でレポートをまとめて大手自動車メーカーに提案。先方から東京に呼ばれミーティングまで行きましたが、これも大メーカーらしからぬ言動に嫌気がさして急遽取り下げて帰って来ました。それは安全に関するシステムの提案でしたが「○○さん、安全はお金になりますか?」と。
seto
安全はお金になる現代を先取りでしたね。
時代遅れ。
やる気を無くさせる上司や先輩はいけませんね。反対に、やる気の無い若者もいけません。自らどん欲に学ぼうとする姿勢や、責任ある態度は最低限必要でしょうね。新入社員で最短1日で来なくなった例もありました。原因は当然ながら本人にもありますが、出社初日から延々と、ほぼ一日中レクチャーをした課長にも問題がありました。仕事熱心は分かりますが、人間は精神的に追い込まれるとやる気も失せるものです。1週間で来なくなった若い男子社員の場合は、きつい女性の年上の上司がまるで軍隊調に
呼び捨てで「○○!」と命令調で使いました。1週間後、彼は無断欠勤。すると今度は所長が本人に電話して「お前!明日から来なくていいからなっ!」と怒鳴りちらして電話を切りました。彼は所長の言った通り翌日から来なくなりました。冗談とは知らずに。若手社員んに対する態度や言動、それに冗談さえも、時代を考えなければ通用しなくなりましたね。我々も自分が経験したとは言え時代遅れの自分に早く気づくべきでしょうね。
seto
だれかひとり気心が合いそうな人がいれば救われますが、そういう人を見つけるまでに時間がかかるので、1日や1週間で辞める場合、上司のほうに問題ありますね。張り切る上司は過剰に張り切ります。昔はそれでも募集すれば集まってきた時代だからいいけれど現在が補充の効かないギリギリ体制で仕事をしてます。ある会社は、ヘッドハンテインング専門会社に数百万払って(絶対辞めない営業マン)を探すよう依頼しました。東京の役員をしていた女性を探して内定、いまも働いてます。平社員からでいいという彼女の願いで平からスタート。めきめき実績を出して、同僚たちから(彼女は凄い)(できる)と評価はうなぎのぼり。こういうやり方があるんですね。初期投資は大きいけれど。
坊主の孫。
譲り合いといえば、昨日、コンビニに用事があって入り口まで行くと、ほぼ同時に私とほぼ同年代の男性がやってきました。私も彼に「どうぞ!」とお先にどうぞのつもりでしたが、何と彼は先にドアを開けて「どうぞ!」と。それに甘んじて先に入店しましたが、ちょっとした仕草で人格が分かりますね。そして気持ちのいいものです。私の場合、女性たちには優しいのですが、これからは男性にも若者たちにも優しく「お先にどうぞ!」を励行しなければと思った瞬間でした。
seto
エレベーターでもそうですね。子供からボタンを押しながら(そちらから先にどうぞ)と降りるときがあって、マナーが行き届いていると感心する場合も多いですね。