詩人で英文学者の加島祥造さんを筆者は大好きである。特に「タオ」(ちくま文庫)は、シンプルな日本語でこんなに深く物事や人生・政治を語れるものなのか驚いたものである。第17章は最上の指導者(リーダー)とは・・・について加島さんは下記のような自由訳試みた。(65ページ)3月に引用したけど何度でも読みたい老子だ。どの政党においても宗教組織でも民間企業でも役所でも家庭でも通用する話だと思い、再録する次第。政界や経済界、小さな企業の中でも毎日起きていること。紀元前6世紀に生きた老子の言葉。

 

第17章 最上の指導者(リーダー)とは

道(タオ)と指導者(リーダー)のことを話そうか。いちばん上等なリーダーってのは

自分の働きを人びとに知らさなかった。

その次のリーダーは

人びとに親しみ、褒めたたえられ、

愛された。

ところが次の時代になると

リーダーは人びとに恐れられるものとなった。

さらに次の代になると、

人びとに侮(あなど)られる人間がリーダーになった。

ちょうど今の政治家みたいにね。

人の頭に立つ人間は、

下の者たちを信じなくなると、

言葉や規則ばかり作って、それで

ゴリ押しするようになる。

最上のリーダはね

治めることに成功したら、あとは

退いて静かにしている。

すると下の人たちは、自分たちのハッピーな暮らしを

「おれたちが自分で作り上げたんだ」と思う。

これがタオの働きにもとづく政治なのだーーーー

これは会社でも家庭でも

同じように通じることなんだよ。

 

第9章 さっさとリタイアする

弓をいっぱいに引きしぼったら

あとは放つばかりだ。

盃(コップ)に酒をいっぱいついだら

あとはこぼれるばかりだ。

うんと鋭く研(と)いだ刃物は

長持ちしない——すぐ鈍くなる。

金貨や宝石を倉にいっぱい詰め込んでも

税金か詐欺か馬鹿息子で消えてなくなる。

富や名誉で威張る人間は

あとでかならず悪口を言われるのさ。

何もかもぎりぎりまでやらないで

自分のやるべきことが終わったら

さっさとリタイアするのがいいんだ。

それが天の道に添うことなんだ。

 

 

  1. 5時から男。

    優しい訳はありがたいですね。老子が現世までも予言しているようで不思議にさえ思え驚きますね。これだけの教えを説いているのに未だに人間は進歩どころか愚かにも退化の道を選んでいるようです。憎み合い、争い、殺し合い、騙し合い、恐れられ、リーダーは孤立の道を歩んでいます。新しい規則や法律で縛り上げて社会を掌握したかのように見えても民衆や、いつかは側近にさえも信頼されなくなるのは明白ですね。嘘とでっち上げられた数字で力を鼓舞しても何時かはバレる事さえ分からないのではリーダーたる資質さえも疑われます。取り巻きも似た者が集まると恐ろしい方向へと進んでしまいコントロール仕切れなくなりますから怖いものが有りますね。

    • 老子の生きた時代も春秋戦国時代で、群雄割拠でした。現代で言うと国家や企業同士の利益(パイの取り合い)と変わりませんから、老子の言葉は現代でも響きます。孔子はどちらかというと、政治を司る側、国をまとめる術、民をして縦関係に従順なるような言葉は多いです。どちらも『徳』という言葉を多用してますが意味は違うみたいで、調べたら報告します。老子は虚無が背景にある気もします。

  2. 器いっぱいのお酒では無いですが、人間にもキャパシティがあって、いくら無理しても限界がありますね。その限界を超える事はしない方が良いのでしょうね。自分に出来る範疇でしっかり働く事が最も良い結果をもたらすのでしょう。オーバーフローしてこぼしては周りにも迷惑や被害さえ与えますから、せいぜい頑張っても器の表面張力辺りを限界点と決めた方が良さそうですね。

    • 相手を受け入れる『空』がないと入りません。ごはんの茶碗も『空』がないとご飯をつげない。霞が関も『空』の空間がないと職員が座る机や椅子を置けません。彼ら全員、雪国で除雪でも強制労働させた方が日本のためになるでしょうが。

  3. 偉いリーダーにはなかなか成れませんが、どんな人でも小さなリーダーには成れそうですね。家庭のリーダー、職場のリーダー、仲間のリーダー、町内のリーダー、と。たとえ一人しか居なくてもリーダーの意識は持てますし、絶えず高い意識を持っていればリーダーとも言えますね。人それぞれが高い意識を持つ事によって、来世までには良い時代が来る事を願いたいですね。

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