ネット広告でのリアルタイム入札
昨日に続いて、広告の世界についての話だ。たまたま7月19日、新千歳空港の紀伊国屋の書籍売り場で週刊ダイヤモンド7月11号「広告戦争」という表題に遭遇。私が苦手としていたネット広告概念を吹き飛ばす記事が満載されていた。
リーマンショックで金融工学で稼いでいた連中が失業して、多くが広告業へ転職。そして開発を始めたのがRTB(リアルタイム入札・Real Time Bidding)。全く新しいアドテクノロジーらしい。これまでのアドテクは、利用者がアクセスするとそこに広告枠があって、スポンサーはその枠を決められた期間、持ち主から購入してお金を払ってきたが、RTBは株の売買みたく、サイトに入ってきた人間を趣味・趣向を瞬時に判断してその人を入札してオークションにかけ、最高額で競り落としたスポンサーの広告を掲載する。
しかも掲載までは0.1秒だ。信じられないスピードだ。利用者のアクセスから広告の表示までは0.1秒だから、画面上はすぐにその広告が表示されているようにしか見えない。金融の売買で培ったロボット技術だ。スポンサーは枠を買うのではなくて人を買う。
たとえば、その人は、「この媒体へアクセスし、旅行、それも僻地の旅へアクセスしている、しかもより安い旅館を探して、一人旅を志向している。」。ロボットは「こういう仕事の多忙なときに、そういう旅行ができるのだから、旅慣れをしていて、既婚者であってもお金に余裕があり、ひょっとして独身者かもしれない。いまは女性でも一人旅が多いから男とは限らない」とか判断して、入札を始めてA社120円、B社100円、C社110円と応札して、最も高いA社に落札するという具合だ。
それを0.1秒で。2014年の日本のデジタル広告費1兆円(総額で雑誌・新聞・ラジオを超えた)のうち、まだ1000億円弱ではあるが、遠回りの手法ではないから、まだまだお金がここに集まる気がする。人と広告主がストレートにつながるわけで、この世界では広告代理店の入る隙が狭くなる。RTB市場の難関はクリック率の新たなスポンサーへ出せる指標を説得的に出せれば急激な市場膨張を来す。
若者が新聞やテレビを見なくなり、スマホやパソコンに接触する時間がふえている。6月11日NHKの朝ドラが視聴率が20%台のとき、別な調査会社が20歳~34歳女性を調べたら数%しかみていなかったという。50歳以上の女性ばかりだ。ビール業界にもタバコ同様、広告の規制が入る動きもある。アサヒ、サントリー、キリン3社で2923億円がテレビCMに使われている。スポーツ選手を起用する広告も議論対象らしい。富裕層が好きなテレビ局はテレビ東京という結果も出ている。
しかしだ、私はブログで何回も貧困やシングルマザーを扱っている。ユーチューブ(グーグル系)でNHKドキュメントで貧困女子を見ていて、彼女たちの命綱は一台のスマホだ。そこへ、仕事が入ったりして稼いでいる。こういう人へRTBは、サラ金広告や請負仕事や風俗の斡旋広告を瞬時に乗せるのだろうかと考えた。人は全体があって初めて一人の人間になる。ウォール街で失業をしたからといって、ヘッジファンドの旗手たちが、その技術を使ってまた大金を儲けようと企んでいるように・・。
最後は、皆さんがご存知と思うが2014年のダイヤモンド社が決算資料を基にランク付けした広告費のメーカー別の金額を掲載します。(単位100万円)。(1)SONY 444,444。(2)トヨタ自動車 435,150 (3)日産自動車 336、792 (4)イオン 172,196 (5)セブン&アイHD 165、645 (6)アステラス製薬 138,500 (7)ブリヂストン 124、339 (8)マツダ 122、488 (9)武田薬品 113、212 (10)サントリー 108、810 (11)NTT 101,266 (12)三菱自動車 101、206 (13)パナソニック 98、195 (14)花王 92、410 (15)富士重工 81,538 (16)キャノン 79、765 (17)キリンHD 77,138 (18)ニコン 70,268 (19)NTTドコモ 69,129 (20)ファーストリテイリング(ユニクロ) 60、941(単位100万円)
蛇足ながら、昨日の記事と今日の記事を合わせて読んでいただければ、政治の世界と広告の世界が深い所でシンクロしていると思う。
昔の少年
今日、僕のデスクトップPCに一通のメールが入った。独身?女性で僕の知る限りはコピーライターらしい。彼女は地方から出てきてずっと一人で生きている。一つは派遣会社と契約していて、そちらからの情報で仕事に就いたりしているから広告代理店だったり、メーカーのマーケティングだったり、今は広告写真を売る素材辞典の事業譲渡先に勤めていてウェブの仕事らしい。しかし彼女の仕事はもう一つある。自分で立ち上げたネット・ショップだ。今では勤め先の安定した収入とネット・ショップの売り上げの両方で余裕も出てきたらしい。女性の社会進出と言うが、自分で生きるための道は年齢などに左右されないネット・ビジネスだと思う。世界を相手にするわけではないが、プロ集団が大儲けのために新規事業ばかりに取り組むのはいいが、そんなに急がずに、もっと身近な主婦や女性や高齢者たちにもできるネット・ビジネスの拡大のためにも、プロを自負する者たちこそ信頼性の高いネット・ビジネスのレクチュアーで生活支援するなどの社会貢献が必要ではないだろうか。一部の大企業の収益を自慢するよりも。