『文明が不幸をもたらす』(クリストファー・ライアン著)に引用された英国の作家、ジョージ・オーエルの言葉だ。また、現在を支配する者は誤った過去を長く伝えてきたとも。『過去を支配する者は未来を支配する』とはどういうことか。国レベルで考えるとこうだ、『日本は太平洋戦争で世界中、とりわけ真珠湾でアメリカの軍艦を襲撃して沈め、第二次世界大戦を起こすきっかけをつくった。なので、戦後は軍事力を骨抜きにする』。現在はアメリカの防衛産業の売上のために中古の武器や最新の戦闘機を買わされているわけだけど、『日本が軍事行動をした過去がいつまでもアメリカから言われ続けて、日本の未来が支配され続ける(心理的にも)』シンプルな例がそういうことかもしれない。(リメンバー パールハーバー)経済だけに集中できたので都合のいい戦後だったと言う人もいる。

『現在を支配する者が過去を支配する』は『勝てば官軍』のことわざを思い出せばわかりやすい。貧しかったけれど、いまは誰よりも裕福になった人がいるとして、過去を余裕を持って思量できる(あのときの苦労が今をつくってくれた)自分の富の確保のために誰かを犠牲にした過去は忘れるようにして過去を改竄するかもしれない。選挙で激しく戦い勝利を確実にした人がいかにも敗者に思いやりをもって笑みを浮かべて余裕のスピーチをして、歴史に名言を残す(後ろにコピーライターがいるんだけど)などもそういう現象である。

バブル期に流行ったものに企業の社史がある。私の前職で50年史が作られた。しかし、その中身に社内の権力闘争が書かれているだろうか?横領事件があって、横領した社員が首をくくった事件があった。書かれていない。社史を編纂した社長がススキノで豪遊して会社の利益を散在したことを社史に書けるのだろうか?『現在を支配する者は誤った過去を長く伝える』ことに結果的になってしまうが、『活字しか、または写真しか手元に無い人は都合の悪い事件はなかったことで前に進んでゆく』。時間の経過とともに真実は闇の中に入っていく。その社史を取引先へ無料で謹呈した。社長自身の手柄として。そこに不在の人間と死者には反論する言葉がないから言われるまま書かれるままである。

『過去を支配する者は未来を支配する』について、国レベルの話を書いたが、実人生でも他人の過去歴からその人の未来を閉ざしてしまう言動を自分たちがしていないかどうか、胸に手を当てて再考したい。

  1. 或る得意先の会社案内のリーフレットを作成しました。長い歴史の中でビジネスとならなかった大赤字の数部門を活字掲載せずに出来上がりました。汚点は残さずですね。順風満帆の立派な社歴になりました。

    • 隠すのが状態の歴史ですし、人間の過去もそうですね。隠したいことを暴く人もいるし、暴かれた側が訴訟を起こす場合もあるので、真実っていったいどこにあるのかわからなくなります。きれいごとの歴史や社史や家族史はまゆつばものでしょうね。

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