「笑う警官」(1968年刊)の名台詞
「・・・・許せないのは、そういう連中(クズばかりの生まれてこなけりゃよかったと後悔している連中)を虫けらのようにひねりつぶす、フォルスベリみたいな手合いだ。あの豚やろうときたら、考えることはてめえの金、てめえいの家庭、てめえの会社のことばかりだ。たまたま他人よりもちっと裕福だというだけで、好きなように他人をあやつれると思っていやがる。ああいう手合いはフォルスベリだけじゃない。実は何千ているんだ。・・・おいそれとおれたちの網にもかからない。出てくるのはそいつらの犠牲者だけだという寸法さ。フォルスベリの野郎は例外なんだ」(425p 角川文庫)マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー作。
夫婦で書いた推理小説の傑作「笑う警官」の最期に大量バス殺人事件の犯人を捕まえた後に出てくる警官の溜息のような科白だ。クリスマスイヴを控えたストックホルム市内で2階建てバス内で軽機関銃乱射事件が発生。若手警官も犠牲になり、その上司のマルチン・ベックが活躍する名作だ。養老孟司さんの対談本で、読んでおきたいミステリーに選ばれていて読んだ次第。
上の科白や娼婦がお相手した男の職業や年齢の一覧など表現に容赦ない。「このリストだけをとってみても、上はストックスンドの銀行支配人から下はガリード療養所の年老いたアル中の泥棒に至るまで、男の見本市といった趣がある」。過去の娼婦にまとわりつかれて殺す羽目になったフォルッスベリ。(このテーマ多い、出世の邪魔になって殺した歌手克美茂、遠藤周作・私が・棄てた・女など)。本人の苦しいときに精神や肉体で支えたのに、急に冷たくなった男たち。その殺人はフォルッスベリだと唯一知っている男がバスの中にる。
今回の大量殺人と過去の未解決の娼婦殺人を追いかけるストーリーだ。犯人はフィンランド戦争に従軍して使った機関銃を自宅に隠し持っていてそれを使ったのだ。シャーロックホームズにどっぷり浸かっていた私は、こういう推理小説をずっと避けてきた。軍事アレルギーに続いて警察官アレルギーでもある。私服の探偵が主人公なら許しもするが、どこの国であっても警察官は苦手だ。背中に国家権力を背負って税金で暮らす威張る民にどこか許せない感情があるんだね。どうしようもなく。
しかし、この小説を読んで少し見方を変えないといけない。「チャイルド44」は連続児童殺しのミステリーで英国人のトム・ロブ・スミス原作だけど彼のお母さんがスウエーデン人だったはず。これも衝撃的なミステリーで、スターリン時代、ウクライナであった事件をモデルにしている。
「笑う警官」の話だよね。最後の1行「マルティン・ベックは答えなかった。彼はただ受話器を手にすわっていた。そして低く笑い出した」。通勤の長い人にお勧め。
匿名
最近の公僕の中にはとんでもない悪さをする奴らが多い。ストリップ小屋でステージに上がり「まな板ショー」の最中に逮捕された教師。階段で女子高生のスカートの中を盗撮した自衛官。飲酒運転の警察部長。外国人ダンサーに貢いだ公務員。など事件が絶えない。一般人でも逮捕されるのは異例だが、普段の業務中の顔の公務員が突然豹変するのは信じられない。もはや推理小説の登場人物を地で行くのが最近の彼らだ。