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今井昇撮影 羊蹄山(4月8日)

親の平均年齢が上がるとともに、遺産相続を受ける子供たちの年齢も上がり、いまでは67歳くらいで遺産を相続する人が多いと言う。お金が高齢者同士の間で回っていて、若い世代には落ちてこない構造だ。

遺産を早めに生前から動かせるように、子供の住宅取得のためなら幾ら幾らまで無税とか、孫の教育費に使うなら信託を利用して、早めに高齢者のお金を社会に吐き出させる工夫をしても、高齢者はなかなか使わない。貯める。貯める。目的は将来の漠然とした不安。100歳を超えた金さん銀さんもテレビや取材で儲けたお金を貯める理由を「老後の心配」と言っていたからね。

低金利の世の中だから金庫・金庫だ。お金を使うのは難しい。使い方でその人の価値観が現れる。しかし、いまの高齢者は日本が貧乏な時代を骨身に滲みて知っている。亡くなった父親を思い出しても、貧乏ゆえに進学を断念して満州へ渡った。ここまで地味な生活をするのかというくらいに、生活レベルを上げなかった。定年と同時に小さな家を買い、車も持たずにバスと電車とタクシーを利用した。

そのお陰で、私を含めて3人の兄弟は、親の老後には一切、お金の心配と財産トラブルは発生しなかった。感謝している。父親が亡くなり、財産名義はすべて母親へ。郵便で兄弟間で財産放棄の印鑑を押し合った。聞くところによると、ここでも、それぞれの家庭事情(子供の進学・入学が多い)で印鑑を押さず、早めに遺産が欲しいと主張する兄弟もいる。しかも兄弟間で発生した財産を巡るトラブルは生涯にわたって付きまとい、死ぬまで続くから厳しいものがある。赤の他人よりたちが悪い。

ひとつひとつの家族で事情は全部違うので平均的な解決がありそうで実はない。聖人君子の集まりならともかく。こういうとき一人っ子って得するように私には見えるがどうだろうか。私の世代は大学進学する者、できなかった者、教育にお金を賭けられない家庭も身近に多かった。親の遺産の話はまるで天空の話かと思っていたら、いつのまにかそこに関わる年齢になっていて、遺産を受ける当事者に60歳を超えてなった。しかし、そのときはふたりの子供も大学を出て働いていた。住宅ローンも終わり、借金ゼロだった。ラッキーな人生だ。

知り合いで、私の住む団地外れの実家の水田を不動産会社へ売却して、特養老人ホームへ500万円寄付した篤志家もいる。なかなかできることではない。こういう使用目的が明確な寄付っていいなと思う。申し訳ないけど、赤い羽根募金など市町村自治体の天下り先の人件費に使われるより、意義ある寄付行為だと思う。隣町の保健部長が定年でJRで赤ら顔で会った時、次はこの町の社協の事務局長に就任すると威張っていたのを見ていたから、新鮮な行為に思える.

定年後、お金の使い道がなくて、海外旅行ばかりしている人もいるし、高級車を乗り回しているのもいるが、少数だ。日本には「親のいない児童」が3万人暮らしている。日曜深夜、日テレで「ママに会いたい」を見ていた。いろんな事情で親が育てられない子どもたちが集団で暮らしている。こういう施設に、もう遺産は要らない60代が隠れて寄付できる制度が出来ればいいなと思う。1000万円以上なら、その恩恵は特養老人ホーム優先入居権利。

お金は高齢者間で回る以上に、実はお金持ち同士で回ってるのが正解かもしれないなと思い直す。そして、お金は「トリクルダウンしない」。そうなると思うのは、自分がお金持か、既得権を太く持って甘い汁を吸っている人の言うことで現実は、貧は貧の連鎖を生んでいるだけだ。毎日入る東京弁護士会の過払い相談チラシ。融資先が先細りの都銀や生保が融資先で一番確実は、自社系列の消費者金融だ。ネットで無審査融資をするなんて、昔のサラ金地獄より怖い。

平均67歳で親の遺産を享受する人もいれば、コンビニ経営失敗で累積1500万円の融資を本部から受けていて、その返金を迫られて実の母親に老健施設で「早く母さん、死んでくれ。」と耳元でささやいた遠縁もいた。酷薄だ。金で人間狂う。ほどほど、普通。そこがわかりにくい。

 

  1. お金は無いが、これまでも、これからも相続の心配も無い。後は、ローンも短期のものに限定して出来るだけ借金を作らない事にしている。それでなくても、何かにつけてお金が掛かる世の中だ。詐欺に遭った人のニュースを聞くが、有る人は有るんだなぁとつくづく思う。銀行金利も最低で預けても仕方が無いと現金を手元に置く人も多いのかも知れない。最近の詐欺犯罪はネットに絡んだものが多いが無知な高齢者や女性をターゲットにしている。また、狙われる人を選別する犯人たちも、あの手この手の犯行だが、元々お金が無ければ出しようも無くお断わりするしか手立ては無い筈。お金は有れば有ったで苦労するもののだろう。現代日本では、ムヒカ氏の言葉も空しい。

  2. 父が90歳を超え、田舎で独居の時、何時も腹巻に10万円を巻いていた。近所の人も何故か知っていたらしく、父に聞いたそうな。「父さん、何でいつも10万円を持ち歩いているの?」と、「山の向こうの敦賀原発事故が起きたら、タクシーで遠くに逃げるためや」と。近所の人達は「まだ長生きするつもりやで」と笑っていたらしい。そんな父は遺産どころか、大きな負の遺産、廃屋に近い借家と小屋に廃材などのゴミを残して逝った。廃材処理・解体費に150万ほど掛かった。貧乏生活で借金はしていないつもりでも、見えない借金を自然に作っているものだ。負の相続は起こり得るので、この時の教訓から、今から身辺のものは全て廃棄している。自分にとって大切なものも子供や兄弟や他人には無用の長物の場合が多いからだ。

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