本当にあった医学論文。

本当にあった医学論文

ふらふらと図書館の新刊コーナーを歩いていると「おやっ」という本にぶつかることが多い。特に専門書は1週間もしたら、所定のコーナーへ運ばれるので私の目に留まることが少ない。

そんななか「本当にあった医学論文②」(中外医学社)という題名に寄せられた。著者も初めて聞く。国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科 倉原優。本の出だしに「この書籍はあくまでも読み物であり、論文の内容について医学的な妥当性を保証するものではありません。実臨床に応用しないようお願い申し上げます」と注意事項を書いていた。結論を書いてしまったテーマもある、ご容赦を。

題名を読むだけでわくわくわくするので、主なテーマだけ列記します。9章に分けられています。

第1章 ・ビリヤードのキューが頭に刺さった少年・硫化水素の充満する下水道に転落した男性・ネギを使って導尿・飲んでいないのに酔う病気(アルコールが検出される)・つけまつげで目がパンパン・トイレットペーパー殺人事件。→口の中にペーパーを押し込まれて殺された事件

第2章 ・アメフト選手とうつ病の意外な関係・吹奏楽奏者の持病とは・マラソンランナーは感染症にかかりやすい?・看護師の6割が腰持ち・医師の自殺傾向について・歴史上もっとも多くの患者を殺めた医師(200人、イギリス人ハロルド・シップマン)

第3章 マイカー通勤をやめるとやせる・ゴルフボールとゴルフクラブ、頭に当たりやすいのはどっち?・ブレイクダンサーはたいてい怪我をする・悪天候のスノーボードは危険・雪下ろしも危ない・手術前に音楽を聞くと不安がやわらぐ・サハラ砂漠でマラソンすると体温は上昇する 

第4章 ・ロマンチックな恋愛は睡眠不足のもと・Twitterにはまりすぎるとフラレルかもしれない→実際多い・結婚すると女性の体重は何㎏増える?・授かり婚(できちゃった婚)に医学的リスクはあるのか・ショウガがつわりに効く?・妊娠中に寿司を食べてはいけない?・赤ちゃんをソファに寝かすべからず・子供の就寝時間と成績の関連性

 第5章 ベジタリアンの死亡リスク・お茶は心血系疾患の予防に有効か?・キムチはカラダによいことづくし?・1杯のワインでうつ病予防・女性はインスタントラーメンでメタボになりやすい・傷口にバナナの葉が効く? 

第6章 サンダルを履いてエスカレーターに乗るのは危険・歩きスマホは外傷のリスク・サイクロン掃除機外傷・青色LEDは目に悪い?→悪い。青色の光は波長が短く網膜に達しやすく視細胞に障害を与える。白のLEDも悪く、緑色のLEDは細胞障害の原因である活性酸素は増加しなかった。白色LEDには青色LEDが含まれている。→長い時間のパソコンやスマホは目に悪いから気をつけよう。

第7章 キスをすると細菌がうつる?・ブラジャーのサイズと肩こりの関連性・脂肪吸引すると胸が大きくなる?・性交渉が多いほど前立腺ガンのリスクが減る・性行為中の死亡事故、意外に多い死因は・浮気の予防薬が存在する?→ミノサイクリンとオキシトシン鼻スプレーが効果があるとされている。

第8章 宇宙線は乳がんのリスクを上昇させる?・女性よりも男性がゲーム好きなのは なぜ?・AB型は認知症のリスク?・殴られたボクサーは認知機能が低下する?

第9章 ・抗菌薬の濫用はガンのリスクを高める?・消化管内視鏡検査時に音楽を流した方がよいか?・糖尿病の管理は女医にお任せ・手術は満月にかぎる。

筆者としてはこの①を入手次第、再度ブログに載せますのでお楽しみに。興味ある方は立ち読みか購読を。

本当にあった医学論文。

本当にあった医学論文(1)

本当にあった医学論文

8月13日に「本当にあった医学論文(2)」(中央医学社)を書きましたが、1作目を図書館より借りられたので表題のみ羅列させていただきます。著者は国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科 倉原優。回答があったほうがいいものについて(  )内で書きました。

第1章 驚きの症例を紹介する●第二次世界大戦の弾丸が70年も心臓に残っていた。(ロシア兵に撃たれたが偶然発見、除去できた)●まさか!の肛門の異物→(牛の角、世界で4例報告ある)●206発の弾丸を食べた人(統合失調症の人で10日間、胃の洗浄で出す)●クレゾールで足湯をするとどうなる?(水虫対策で入れたが中毒で尿が黒くなる)●ハネムーン喘息(初夜の緊張と性行為のストレスが相乗して起こるケースあり)●コメディー番組の見過ぎは痙攣のもと!?●体温13.7Cの状態から生還した女性●室内での落雷事故●魚が耳に刺さった(ダツという針のようにとがった魚がいる)●醤油の一気飲みで血清ナトリウム値が196mEq/L 

第2章 都市伝説を検証する●「大腸ガス爆発」の都市伝説を検証する(20例の報告あって1名死亡)●床に落ちた食べ物は安全か?15秒ルールの妥当性●コーラは骨を溶かす?(コーラにあるリン酸が骨に影響すると言われてるがリンの摂取は少なく、関係ない、むしろ糖尿病注意です)●逆子は遺伝する?●ロックが好きな青少年は非行に走りやすい?(少しある程度)●指の関節を鳴らし過ぎると関節炎になる(ならない)●電子機器は精子の運動性を低下させる(膝にノートパソコンを置く姿勢は精子に良くないらしい。精子の運動率が膝の場合約68%、パソコン置かない場合約81%。ノートやタブレットは膝や生殖器のそばに置かないで)●ジェットコースターのドキドキは恋愛を成就させる 

第3章 ふとした疑問を解き明かす●ハリーポッターの頭痛を真面目に診断●魚を食べないと、胎児の知能が低くなる?●規則正しい睡眠をとらなければ子供の成績は落ちる?●ピアノを学ぶ生徒が手の障害を訴える割合は?●地下鉄事故の死亡の半数が自殺、1.9%が他殺 (NYの統計。50人に1名他殺。自殺患者から多く抗うつ薬が検出。事故死からはコカインとアルコールが出ている)

第4章 日常生活を彩どる ●笑いは免疫力を高めるかもしれない(笑いに悪影響はないと言う程度)●過度な休憩をとった方が長くカラオケを楽しめる(適度な飲水と声休めが必要)●歌は言語習得に役立つか?●テレビの見過ぎは寿命を縮めるかもしれない(寿命には関係ないが、テレビの付けっ放しはやめよう)●テレビの視聴時間が長い子供は親への愛情が希薄になる?●鼻毛が長いと気管支ぜんそくになりにくい!?●ストレスの多い男性はふくよかな女性が好き(そういう統計がある。飢餓状態ではふくよかさを好む)●ストレスの多い女性は魅力的ではない?●配偶者が入院すると死亡リスクが上昇する●グラスの形で飲酒のペースが変わる(ストレートグラスがカーブドグラスより飲酒スピードが60%遅い)●ギャンブルと心拍数の関係●ネクタイは医学的によくない(きつく締めなければ脳血管などに影響はない)●加齢臭で年齢を当てることができる!?(中年が一番不快な匂いを発する、高齢者や若年性は体臭の不快度低い)

第5章 クスリにまつわる ●人種差別を減少させる薬が存在する(真実は闇の中)●ゴキブリの抽出物ががんに効く●浮気は医学的に予防できる(浮気防止ホルモンオキシトシンのことだが。浮気が治療が必要な病気なのかどうかから議論を)●薬物におぼれた麻酔科医は現場に復帰してもよいか?(実際、現場復帰している)

第6章 運動とスポーツ ●サッカーのヘディングは脳白質にダメージを与える?(1年間で2千回を超えないのなら大丈夫)●新しいスキー用品を買うとケガをしやすくなる●看護師が太極拳を習うと仕事の生産性がアップする!?●バンジージャンプで眼から出血(網膜の血管内圧が上昇するので医師は勧めないスポーツだ)

第6章 ニッポン発 ●餅を噛まずに飲み込むとイレウス(腸閉塞)になるかもしれない●桜島の火山灰が肺に与える影響●走行距離の多いタクシー運転手は腰痛持ちが多い。

第7章 明日から臨床に役立つかも ●朝食を抜くと冠動脈疾患のリスクが上昇する●スマホとガラケー、コンタミネーション(病原菌感染)のリスクが高いのはどっち?(スマホが非スマホより高い。病棟で医療用デバイスの使用は控えた方がよいかも)●ヨガは肺結核の治癒を早める?●虐待を受けている認知症患者は多い●犬は尿・便のニオイでがんを診断できる(がん探知犬育成センターで活躍している

黒澤明自伝「蝦蟇(がま)の油」より・検閲官。

黒澤明自伝『蝦蟇(がま)の油』より・検閲官

 

ここは彼の声まで聞こえる文章を引用するしかない。

「戦時下の日本の言論は、日ごとに窮屈になり、私の書いた脚本も、会社の企画に取り上げられても、内務省の検閲で撥ね付けられた。検閲官の見解は、絶対であって、反論は許されなかった・・・反論には何かというと米英的である、ときめつけて、反論には、感情的になって権力をふるった・・・・。サンパギタの花という脚本でフィリピンの娘の誕生日を祝うシーンを米英的だといって私を詰問してきた。・・・私は天長節という天皇誕生日を祝うことしてるじゃないですか。あれも米英的ですか?検閲官は真っ蒼になった。そのシナリオは葬られた。・・・・当時の内務省の検閲官は、みんな、精神異常者のように思われた。彼らはみんな、被害妄想、加虐性、嗜虐性、色情狂的な性向の持ち主だった。・・・たとえば、(勤労動員の学生たちを、工場の門は胸をひろげて待っている)と書いても猥褻だと言う。なぜなら、彼らは門という字で、陰門を想像したのだから。色情狂は、なんにでも、劣情を感じる。・・・まさに天才的な色情性というほかはない。それにしても、検閲官というドーベルマンは、時の権力に、よくも飼い馴らされたものだ。時の権力に飼い馴らされた木っ端役人ほど怖い者はいない。ナチズムにしても勿論ヒットラーは狂人だが、ヒムラーやアイヒマンを考えても解るように、下部組織に至るほど天才的な狂人が輩出する。それが、強制収容所の所長や看守に至ると、想像を絶した狂人になる。戦時中の内務省の検閲官は、その一例だろう。彼らこそ、檻の中に収容すべき人間である」黒澤明の激越な文章である。

「彼等のことを思い出すと、思わず身体が震えてくる」黒澤明は、自分の脳は脳血管が異常に屈折していて真性癲癇症だと。子供のときもひきつけをよく起こした。癇癪持ちなのはそんなところにも原因があるが、検閲官への恨み・憎悪は凄い。(長い話・・p251~253)

この自伝では、軍人のお父さんの厳しいしつけについて、弱虫・泣き虫の子供の頃、必ず助けてくれた4歳上の兄のこと。4男4女の一番下に生まれた黒澤少年の生い立ちが、関東大震災の風景、徴兵の検査のとき貧弱な肉体と検査官がたまたまお父さんの部下だった幸運もあり兵役免除されたこと、小さなときから映画を山のように見たこと、その思い出すままに映画名が出てくるが初めて聞く映画ばかり。さらに兄の住んでいた下町長屋で、そこに暮らす人々と接しながら「まるでここは落語の世界ではないか」と思わせた。山の手育ちの黒澤明をびっくりさせた。

天才的に頭の良かった、東京府下で一番の成績の兄が進学に失敗(たぶん面接のときのその態度に不合格になったと推理している)し、映画館に雇われる説明士(弁士)になり、自由に弟に的確にいい映画をチョイスして鑑賞させ、黒澤少年の映画感性の下地を作ってくれたことである。

しかし、時代は無声からトーキーへ。弁士の仕事が少なくなってくる。組合の委員長をやらされて悩み、27歳で自殺する兄への感謝は並大抵ではない。黒澤青年23歳のときの事件だ。映画界に入るのが26歳。小学時代、いじめられていたときも、必ずやってきて彼を守ってくれた。

この「蝦蟇の油」は、シナリオを書くように必死に書いているのが伝わってくる。

それと恩師山本嘉次郎さんへの尽きることのない感謝である。映画作りで細部にこだわること、音楽は控えめにすること、俳優の動かし方も山本監督を見ていて学んだ、映画をつくるときに一番肝心は、助監督選びだと。現場を任せるわけだから。任せる人を間違えると映画は台無し。企業にすれば倒産を招きかねない。

「私は言葉こそうまく喋れないが、世界中のどこの国へ行っても違和感も感じないから、私の故郷は地球と思っている。世界の人間がみんなそう思えば、いま、世界に起こっている馬鹿なことは、ほんとうに馬鹿なことだと気が付いてやめるだろう」(127p)地球でさえ狭く感じる感性を持っている黒澤だから「世界虫」みたいな人。世界中の映画監督から尊敬されていたわけだ。虫だから地を這う視点も当然持っている。

J・ルーカス、F・フォード・コッポラ、スピルバーグ、マーティン・スコッテセン。地上や地下からも、地球外からも視点を移動して物を考えられ、映画を作れる。

人間の奥底には、何が棲んでいるのだろう。その後(自分の悪口を言い触らし結婚を邪魔した男について書いた後)、私は、いろんな人間を見てきた。詐欺師、金の亡者、剽窃者・・・。しかし、みんな、人間の顔をしているから困る。いや、そういう奴に限って、とてもいい顔をして、とてもいい事を言うから困る」(295p)。

モーツアルトのピアノを弾くナチスの高官が同時にユダヤ人の囚人を窓から撃ち殺すシーンを描いた「シンドラーのリスト」のワンシーンを思い出す。私にとっていい人は他人にとって悪人的な存在、むしろこちらの方が多いかもしれない。奥さんや子供にとっていい旦那が実は会社では過酷なリストラをしていて、憎まれる存在であったり、会社で有能な仕事をする人間が、家庭では居場所のない余計者あったりするケースの方が多いように思う。