働かないアリの意義。

2月17日の北海道新聞夕刊で働かないアリの意義について1面で記事にしていた。似たような話を昨年4月23日に筆写も別な観点から書いていたので再録します。

 

切り株
自宅の切り株

 

庭の真ん中に、大きな切り株が置いてある。河原から拾ってきたのか、農家の伐採作業で路肩に捨てられたのを拾ってきたのか忘れたが10年以上たつ。その切り株が腐り出して、捨てようかとエイッと持ち上げたら、小さなアリが大混乱。株の中にも巣を作り、根元には白い卵が一面に広がっていた。初めは混乱していても、だんだん統制が取れてきて、大事な卵を次々、安全な穴の中へ運び出した。しばらくすると、卵は1個もなくなり、見事な仕事ぶりだ。若いとき、こんなに筆者は仕事をしただろうかと思案した。

仕事ぶりといえば、働きアリの15%程度は、全然働かないらしい。いつも女王ありのいる部屋の近くでゴロゴロしていて働こうとしない。しかし、この働かないアリを全部除去したら、やはり15%のアリは働かなくなる。さらに、働かないアリだけを集めた集団を作ると、85%は働きだす。つまり集団を構成するためには15%程度の遊びのアリが必要なように自然界では組み立てられてる(のかな?)「俺はその15%のアリだよ」とサラリーマンは威張らない方がいい。賢くさぼらないとね。関係ないけど、車のハンドルにも遊びは必要だよね。

昆虫は、ほぼ本能で動くので、これは初めから決められたことなのかどうなのか。「アリとキリギリス」というイソップ物語があるが、アリの中にも怠け者がいて、ほかのアリに寄生して生きてるのが15%いるとしたら、イソップさんもびっくり発見だ。ミツバチにも花にミツを採取に行かない、働かないハチはやはりいるのかどうか。養蜂家に聞くとこのあたり、わかるかもしれない。飛んで行って、働いてるふりをしてどこかで遊んでいる。だんだん、筆者の営業マン時代の告白のような話になってきてまずいので、アリの話はこの辺にするが、生き物の世界は奥が深い。

私も家庭では、働かない夫として見られているので、ときどき働くふりをして3日に1回はトーストを焼いて、「オーイ、朝ご飯ができたよー」とごまかしている。アリを観察していると、他人事とは思えないリアリティがあるものだ。

最近(昔から)、国会はじめ、全国の議会議員の昼寝やスマホいじり、週刊誌読みが横行して15%のアリかなと思うが、そのアリたちも集まれば働くなるようになることを考えるとアリ以下といってもいいかもしれない。高額の税金が彼らに投入されているのだし。

「思想の真の歴史は、学術書の中ではなく、一人ひとりの人間の生きた精神組織の中にある」(G・ユング)

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左フロイト、右ユング

このユングの言葉が、世界認識や自己認識に深く関わることは言うまでもない。昔、哲学の入り口に立ったとき、ユングやフロイトはどちらかというと文学で、どうして個人の深層心理や無意識が過去の歴史に通じるのかとか、時間の継時的な概念や事件や経済関係とどう関係するのかとか批判的に言われた。

太古の歴史に個人の心理を重ねる方法論に今でもアレルギーを覚える人は多い。「時代が違うだろう」とか「古臭い話だね」とか「精神分析手法でやられるとそれって学問じゃないよね」とばっさり切り捨てる人もいた。河合隼雄さんの努力でユングは人口に膾炙して、いまではフロイトより読まれているかもしれない。

私の好きな「日本昔はなし」(テレビ東京・日曜朝9時)は、テーマは日本昔話だけどこの種のストーリーは世界中探せばたくさんある、普遍的な人間心理を描いている。河合さんの生の声を聞きたくて、小樽市で毎年秋に開催している「日本ファンタジー大賞」授賞式に列席して、特別講演やシンポジウムを何度も聴きに行ったものである。河合隼雄さんが主賓なので、茂木健一郎・大江健三郎・養老孟司・中澤新一・谷川俊太郎・柳田邦男・立花隆・筒井康隆・森毅など河合隼雄さんを慕う・尊敬する面々が集まって楽しい時間を私も過ごした。日本の昔話が世界中で同系のお話がある。世界のお話が日本昔話にあるといってもいい。意識の底の底にあるものは民族を超えて共通だというのがユングの立場でわかりやすい。

ともかく表題の「思想の真の歴史は、学術書の中でなくて、一人ひとりの生きた精神組織の中にある」。これを敷衍すると、個人史からいえば、近年の話題で清原選手が「あのときのドラフトで桑田が早稲田へ進学すれば、俺は王さんからサインボールをもらい巨人入団が決まっていて、西武へ行くことはなかった。薬にはまることもなかった」(これも断定はできないが)ともいえる。

さらに、アフガニスタン空爆やイラク空爆でたくさんの市民が米英の戦闘機の爆撃で虐殺されて、その子供たちが西欧の文化やキリスト教へ復讐しているのかもしれないとも思えてくるときがある。被害者は加害者以上に残忍になるときがあるのである。同時に加害者は健忘症でもある。

国の歴史を考えても、幕末に日本はアメリカから開国を迫られていやいや開国した。その同じ手口を今度は日本は朝鮮へ1910年行って合併し、言語まで日本語を強制。それが今日の排日感情の背景にある。欧米への脅威から、日本も天皇を中心にして疑似一神教の体制を敷いて、真似をしたのである。自分よりその時点で弱い人(国)に対して。

フロイト学者岸田秀は「一神教は被害者意識の強い宗教」「復讐を繰り返す宗教」「世界史の中での特異なローカル現象」「嫉み深い宗教」「ヨーロッパもローマ帝国がキリスト教を国教にしなければもともとアルプスの向こうは多神教であったから、嫌々ながらクリスチャンにされた感情の深い所にその恨みが流れていて、その後のヨーロッパの生き方を決めた。ユダヤ人差別も強いローマヘ反抗できず、弱いユダヤへ向かっていったのでは?」と。自分より強いものへは向かわず、より弱い生け贄を求めて人間集団は動いていったと見る。

さらに「アメリカはヨーロッパーで虐められ(食べれなくなる極貧)で渡ってきたので、今度はさらに弱いインディアンを虐殺して土地と資源の泥棒していった」「アメリカが世界の警察として出しゃばる癖は(世界中の軍事費を足してもアメリカ一国の軍事費に満たない)、とにかく自分たちの価値観を押し付ける源泉は、国の成り立ち(イギリスに立ち向かう・独立を勝ち取るためにまとまる標語を欲する)にあり、付和雷同しやすい気質(付和雷同しないと強いイギリスへ勝てない)にもあるだろうと思う」。

だからモンロー主義(孤立主義・地域でまとまる)と拡張主義は矛盾しない。小さく圧縮してまとまると、拡大も早いし、攻撃性も強いのである。下手したら際限がない。

ひとりの人の精神組織の中に、たくさんの人、育てた親の価値観や教師のイデオロギーや影響を受けた人の言葉や行動が染み込んでいる。そこには階層や文化や民族や歴史も含まれる。日々、私たちは無意識にせよ、その価値観に左右されて自分の物語を創りながら生きている。

この項目はテーマを変えて何度でも出てきます。いまの世界の問題だと思うので

緊急 トランプの魔力 MAKE AMERICA GREAT AGAIN

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2月7日のニューズウィークの見出しは「トランプ大統領」についての特集だ。NewsWeek は多少、民主党よりの雑誌なので、少し差し引いて読まないといけない。日本の新聞やテレビ報道より、書き手が直截な表現が多くてわかりやすい分析だ。

まさかアメリカのマスコミはトランプがここまで共和党の大統領候補の先頭を走るとは思わなかったと、正直に書いている。失言や罵詈雑言、とても外交はできない、テカテカの髪の毛(ヘアスプレー使用・オゾン問題へっちゃら)とか「アメリカの大統領にするには対外的に恥ずかしい候補」という印象をインテリたちは思っていたが、いつの時代もどこの国でもインテリは情勢判断を誤る者だ。書かれたものや表現されたもので判断して、自分の五感で世間を判断しようとしないからだ。官僚もマスコミも同じだ。文学者や詩人のほうが市井に生きていて正確に言い当てるのも、五感が健在だからだ。例外もたくさんいるけど。

トランプの各論点についてざっと書いてみる。(同紙29p)

1)銃規制・・「武器を保有・携帯する権利こそが、われわれの自由と他の権利を守る」相次ぐ銃乱射事件にもかかわらず、規制に反対。銃犯罪を犯しそうな頭のおかしい人は施設に隔離する。

2)在外米軍・・「撤退させれば何百万ドルも浮く」欧州に限らず、在外米軍が大きな財政負担になっている。「いつまでタダで韓国を北朝鮮から守るんだ、その必要はない」と言う一方「中国のけん制のため米軍強化を」と矛盾したことを言う。

3)イスラムとの関係・・「イスラム教徒を入国を完全に禁止する」テロの真相がはっきりするまで。モスク監視や信者のデータベースを作ることに意欲。

4)移民対策・・「南部の国境には壁が必要だ」メキシコの移民を「犯罪者やレイプ魔」。万里の長城のような壁を作り、費用は全額メキシコ政府に負担させる。

5)テロ対策・・「わが国民を殺そうとしている連中にわれわれの発明品を使ってほしくない」ISISがソシャルメディアを通じて勧誘していることを受けての発言。ネットを遮断すればいいと言うが「アメリカ国民も困るよ」と言われて沈黙。

6)税制改革・・「アメリカンドリームを実現できるように財源を増やす」アメリカ企業が祖国を捨てて国外へ出て行き中産階層が貧しくなったと嘆く。夫婦で年収5万ドル以下は税金をゼロ。相続税を全部廃止。財源は富裕層への減税措置を止めて捻出。

7)退役軍人へのケア・・「退役軍人省の施設に600万ドル以上つぎ込み噴水や銅像を作る無駄」を指摘、それより彼らへの医療サービスを手厚くする。

これまでの大統領候補と違うのは、大金持ち(不動産王)ゆえ、ほかの候補がウォ-ル街の投資・金融機関や製薬メーカー、保険会社やエネルギー会社から選挙資金を投下されて、戦う選挙ではなくて自前と寄付でやってるから「言いたい放題」が受けていて、特にブルーワーカー層の白人(自分たちの代弁者がいなかったし、選挙に関心も低かった層。失業に怯える層)が熱狂していることだ。ブッシュや現職の州知事、上院議員や保守に強いクルーズ。オバマに近い、妻が証券会社ゴールドマンサックスで働くルビオなど華麗なキャリアを持つことが災いしていると言う奇妙な選挙だ。トランプは倒産・失敗・離婚、あっちにいったりこっちに来たり、意見もコロコロ変えて右往左往。そこがうけたのだと筆者は思う。

インテリから言うと反知性主義の流れに落とし込む層だ。1920年30年時代のドイツに似ているともいえる。失業者が強い指導者出てこいと出てきたのが「国家社会主義ドイツ労働者党」(ナチス)ヒトラー党首だった。明確でわかりやすい、すぐに敵はここだと指摘して迫害させる生き方だ。トランプ以外は全員で足の引っ張り合いで、共和党自ら招いたことだとニューズウィークは手厳しい。

オバマの政策になんでも反対を使命にしてきた共和党は、ここにきてパニックに陥ってる。党内のモラルハザードだ。かつてといまのアフガニスタンやシリアの状況「破綻国家」の様相だ。共和党は議会で過半数を制しながら、何も建設的なプランを出せなかった。共和党が漂流している。ヨーロッパの既成政党も社会に溶け込めないイスラム教の若者たちのレジストに、地元若者(中産下層階級含めて)中心に右傾化(イスラム排斥・移民排斥)が北欧を含めて支持されているのに似ている。日本でも匿名によるネット右翼の横行や罵詈雑言の排他性(クレーマー)跋扈に近い。

誰かが言っていたけど「人間は歴史から何も学ばない」。学ぶと言ってるのは歴史番組を作ってるTV製作者や学校の先生と説教好きなプチインテリ、悠々自適の年金生活を送る高齢者だけかもしれない。現実はどんどん退化しているように、1週に3回は街中を歩きたくさんの人とお喋りしてる筆者には思える。