サリエルの命題(ワクチン接種優先順位)

インフルエンザの突然変異型で、世界的な大流行を起こしやすいパンディミック(スペイン風邪や香港、サーズ、鳥インフルなど)に備えてワクチン研究に心血注ぐ研究者の物語だ。アメリカの82歳になるインフルエンザ研究者レイノルズ個人ラボラトリーに呼ばれた野原研究員。これまで長い間メールでお互い論文を読みあった仲であったから意思疎通は早いし、医学の進歩と幸せ感も似ている。『万人が等しく医療技術の恩恵に与れるというならまだしも、医療は立派なビジネスだからね。カネのあるなしが、命の長短を決めるなんて、どう考えてもおかしいよ。そりゃあ、どん底から這い上がり、富を築いた人間も世の中に幾らでもおるさ。だがね、どんな家に生まれついたかで人生が決まってしまう人間の方が圧倒的に多いんだ。そんな世の中は間違っている』(サリエルの命題 楡周平 講談社 同著112p)たとえば、いま日本でパンデミックが起きたとして、ワクチンが1000万人分しかないとき、接種の優先順位があるのをご存知だろうか?最優先は医者と看護士だ。次は国民生活・国民経済の安定に従事する仕事に就くもの(政治家と公務員・軍人)だ。一般市民は後回しであることを覚えておいてほしい。さらに政治家や医者のコネを使って我先に接種を受けようと大混乱が出てくるのは必死だ。『現代社会の歪みきった構造が一気に表面化するのはその時だ。権力者、富裕層は真っ先に接種を済ませる。ワクチン製造に従事する製薬会社の人間たちもそうだろう。力、カネ、コネの有無が生死を分けることになるんだ。・・・・接種を受けられない人は日本はどうなるかわからないが、アメリカではこの世の地獄になるだろうね』アメリカは銃保持市民が多いからね。レイノルズ博士は前立腺ガンを罹患してリンパへも転移している。『もう82歳だよ。治療を受けたところで余命は知れたものだし、生命体は死を免れない。それを医療の進歩で生き永らえようとするからおかしなことになる』野原は、この言葉を受けて『病の克服は、必ずしも人間社会を幸せにするものではない。それがあなたの持論でしたね』と続く。年間医療費42兆円(内訳65歳以上が6割使用)。医者がなぜ裕福な暮らしになるのか、それは『日本の健康保険制度』のお蔭です。診療報酬も考えず、処方する薬の薬価も知らない医師も多い。製薬会社も健康保険制度に依存する税金による収入会社、医療機器の納入も原価を償却するために高額医療費の上限があるからすべて税金から残金は全額徴収できる。そうやって医療費だけで42兆円使う。ワクチンの開発と購入もビジネスチャンスとばかりに異様な情報戦が始まっている。新型コロナは変異が早いので、変異に合わせて次のワクチンへと進まないといけない。ワクチン接種で重症化するケースも考えられる。それもそうだ、微弱な新型コロナに似たウィルスを投与するのだから。

 

イベント七転八倒の話(コロナの気配もない昨年の同じ日掲載)

糖尿本

全道の自治体をキャラバンして、市町村の住人を集めた「健康教室」をある団体の主催で年間2回開催していた。テーマも「笑う門には福来る」とか「脳梗塞にならないために」「糖尿病の治療最前線」「温泉健康療法」とかだ。しかし、高齢者の多い地方で確実に集客ができるのが「ボケないために」というテーマ。イベントは用意された席数を集めるため、2か月前に地元自治体の担当部署と協議して、保健課の人から明るく「150名なんて大丈夫よ。200名も来るかも」と自信を持って言われた。

湖の美しい町だった。すっかり観光気分で大船に乗った気分。ところが午後1時に開会する講演会なのに、会場の駐車場へはさっぱり町民の車が来ない。時間は45分を過ぎてあと15分。まだ20人くらいしか座っていない。ヨシこうなったら、アレしかないと私は判断。会場が地元で一番大きなホテルだったので、あらゆる部署・階にいる従業員に「制服や掃除服を至急脱いで私服に着替えてください!会場にある席に座ってください!料理人の方もお願いしまーす」。

一方、用意したパイプ椅子をどんどん片付けて200席用意した椅子を半分に。さらに後ろの衝立を前に持ってきて、会場を半分に。なんとか体裁を整えて講演開始。講演だけは無事に終えたが、最後に恒例の反省会が講師の医師を交えて実施。シーンとお悔みの反省会。タバコ好きは「ちょっとタバコを吸ってきます」と言って逃げる。当日はプレゼントに250ccのミルクがもらえるプレゼント付きだったが、この地は酪農がメーンの産業。来るわけないよなあ。しかも後でわかったことだが、この講演の1週間前に,全町で大々的に「町民健康まつり」をしたばっかりだって言われてがっくり。チグハグなイベントであった。

私は、この失敗イベントで始末書を書いた。成功したイベントより、失敗したイベントが懐かしい。お金をかけてるわけだから、人が集まるのがあたりまえ、来ないのは企画の詰めが甘いと常務からは叱られる散々のイベントだったが、仕事ができない役員から正論が出た時の腹の立ったこと。仕事ができない奴ほどよく吠える。人の失点に食らいついてくる。困った人材が多い。この点をこう改善したらいいのでは・・という提案的な話なら聞くが・・・・。さらに私のミスは続く。

 

空気を読んでも従わない(息苦しさからラクになる)(鴻上尚史)

820円(税別) 全国の学校に1冊は置いて欲しい本だ。

2019年4月に作家・演出家の鴻上尚史さんが岩波少年文庫に書き下ろした、青少年向け(大人が読んだらスムースに理解できる)に生き方を指南、アドバイスした。下記のような気持ちになったことがある読者を対象にしている。

・どうしてこんなに、人の頼みを断るのが苦しいのか?

・どうしてこんなに、周りの目が気になるのか?

・どうしてこんなに、先輩に従わないといけないのか?

・どうしてこんなに、周りに合わそうとしてしまうのか?

・どうしてこんなに、ラインやメールが気になるのか?

・どうしてこんなに、なんとなくの「空気」に流されるのか?

上の6つの気持ちを分析して、日本には「世間」と「社会」があって、「世間」は家族・地域・学校・クラブ・会社など平素、自分が知っている(または知られている)集団に属していることから生じる心の動き。たえず相手(世間)のゴリゴリ価値観に縛られて、自分の居場所を世間の中に置いて生きる。一方、著者は「社会」での生き方を提示。気持ち的に楽になるあり方を勧めている。「社会」はまったく知り合いのいない未知の世界。自分から進んで発言すれば意外な人に出会ったり、思いを同じくする人に遭遇する機会もあるかもしれない。そこが家族やクラスメートと一緒にいるようなリラックスできる場所。孤独や孤立を恐れない生き方だ。はじめは苦しい思いをするかもしれないが、一つだけの世間(仲間)だと息苦しさが増す。イジメや排斥の同調行為になりやすい。世間に従うにしても緩く所属する複数の世間を抱えているほうがいいとアドバイス。逃げる場所がある。昔のクラスメートとか趣味仲間とか塾での友人、よその学校の友人でもいい。とにかく一つの集団に金縛りにならないようスマホ時代だからこそ多いメールによるイジメ。メール1本で人が死んだり、殺すこともできる現実を見据えて欲しいと。仲間意識が強いということは、それだけ排他性も強いということ。そうして仲間はずれを作ることでより集団の力は強まる。ようやく見つけた私の敵というわけだ。声の大きいボスの指示で集団が動き出すかもしれない。この本は全国の小学校や中学に1冊は置いて欲しい本であると思った。大人についても・・・・・・

『強い世間に所属するあなたは強くなります。それはあなたが強いのでなく、あなたを支えてくれる《世間》が強いからです。私たち人間は弱いのでそういうもので自分を強くしますが、学歴だったり家系だったり一部上場企業だったりね。強いチームに所属すると、自分の実力は変わっていないのに、まるで自分が強くなったような気がするのと同じ。』。大人になっても上記のフレーズは生きている。別にあなたが作った会社でも媒体でも銀行や商社でもないのにね。ましてや自治体や国や・・である。ちょっとの間、おじゃましますと属しているだけだと思えば、心身健康は保てますね。